㈱マネーデザインの中村です。

今年も残すところあと1日、皆様は年末年始を如何お過ごしですか? そしてこの2014年はどのような年だったでしょうか?

良くも悪くも、アベノミクスによって、民主党政権時代の経済運営とは様変わりとなったことは明白な事実です。来年は今年以上に、我々一般国民が景気の良さを実感できるよう、様々な経済政策を打ち出してもらいたいものです。

未来を正確に予測することは人間はできないとの立場から、具体的な株価、為替予測はしませんが、大きな流れをとらえることは必要との考えから、2015年の世界経済の中で日本経済がどのように変化していくか、その流れを俯瞰していきたいと思います。

まず、世界経済の大きな流れをつかむうえで、OECD(経済協力開発機構)の国、地域別成長率の見通しを見ていきましょう。

OECD

2014年11月25日発表のOECD Outlook #96から

 

1.米国が世界経済をけん引する

アメリカは、2014年1-3月に悪天候の影響でマイナス成長に陥る局面がありましたが、徐々に回復軌道にのり、最近では3%成長路線に戻っています。特に最近では、原油安がアメリカ経済にとって大きなプラス要因であり、先進国経済を一人で牽引している感があります。

2.日本経済はアベノミクスの結果、家計の疲弊と法人の高揚感が対照的な動きに

消費税の再増税は延期されましたが、4月の8%への消費税増税は、かなりのインパクトを日本経済に与えました。消費支出は、4月以降マイナスを継続中です。一時は持ち直しの気配もありました消費者態度指数も秋以降下落に転じ、家計の疲弊感は否めないものとなっています。実質賃金はマイナスの状況が続き、政府のいう「経済の好循環」は達成できていないのが実際ではないでしょうか。

一方、法人サイドは、円安、原油安、株高の好インパクトにより回復基調にあります。さらに年末の与党税調による与党税制大綱により、2015年以降法人税実効税率を3.29%以上減少させる目標を確認しました。このように、マーケットからの追い風と政策的な追い風のダブルウィンドを受けて、法人サイドは、堅調な1年になる可能性が高いです。

2015年は疲弊する家計部門と好転する法人部門の二極化がますます顕著になってくるでしょう。さらに家計部門では、お金を所有している高齢者層と持っていない若年層との二極化、さらに富裕層と一般層との格差の拡大など、経済の二極化が大きなテーマになってくる予感がします。

3.デフレ経済に突入するEU各国

EU各国は、足下のCPI(消費者物価)が+0.3%と片足デフレの状況です。ウクライナ問題の解決がなかなか見えない中、ロシアとの対立がEU経済の足を引っ張っているのは間違いのない事実です。さらに最近になって、ギリシャの政治的混迷により、極左的政党が台頭してくると、混迷の度がさらに増すことになるでしょう。ドイツは日本の経済情勢より良い数字が出ていますが、このところその強さが影を潜めおり、EU全体の牽引役としての力強さはありません。2014年1.5% 2015年1.1% 2016年1.8%がOECDの予想です。

ユーロ圏の失業率は、全体では11.5%(10月)という依然高水準のままで推移しています。特に25歳以下の若年層の失業率がユーロ圏全体では23.5%に達しており、スペインに至っては53.8%と未曾有の水準となっています。

4.中国、ロシア、ブラジルなど資源国、新興国は?

最近の原油価格の下落は、世界経済に大きなインパクトを与えています。これは来年も継続し、資源国の下振れリスクとなる最大の要因です。

中国は、「習近平=李克強」ラインが成長至上主義から離れて以来、GDP成長率の鈍化が続いています。無理な経済成長に頼らず、現実的な線で経済政策を進めることは、一方では評価されますが、再び2ケタの経済成長に回帰することの難しさを顕在化しました。

一時、大きく取り上げられた「シャドーバンキング(影の銀行)」の問題は、最近鎮静化していますが、不動産投資に対する中国政府の規制強化、緩和と政策が目まぐるしく変化し、政府も時限爆弾の扱いに苦慮している様子が見て取れます。OECDによる2016年の見通しでは、6.9%と7%を切る予想がでており、中国経済の失速が世界経済に大きな影響を及ぼす可能性があります。

鉄鉱石、原油などを産出する資源国は、2015年も大きな試練に直面するでしょう。まず最近の原油急落の影響ですが、減産を見送ったOPEC(石油輸出国機構)は、2015年の原油需要の見通しを日量2,890万バレルと下方修正しました。アメリカのシェールオイル革命により、産出量が増えたにもかかわらず、サウジアラビアが減産に踏み込まず、供給過多になったのが、直接の原油価格の下落要因です。サウジが石油戦略を価格維持からシェア確保へ転換すると、原油価格の下落基調は長期化すると見る必要があるでしょう。

これにより、ロシアのルーブルが対ドルベースで大幅安になり、2015年はロシア経済発の世界的不況が、大きな不安定要因となることも要注意です。

一方、この原油安は日本経済のとっては、プラスに働くことは間違いないでしょう、内閣府の試算でも、原油3割下落の際には、実質GDPが1年目+0.33% 2年目+0.57% 3年目+0.24%の押し上げ効果があるとしています。さらに賃上げにも好影響を及ぼすこととなれば、大型補正予算による景気刺激策並みのインパクトがあります。原油価格の下落は、日本経済にとって「神風」となる可能性も想定できます。

5.FRB、日銀など中央銀行の金融政策は?

いうまでもなく2015年最大の注目ポイントは、FRBの利上げ時期です。アメリカ経済が現在の好調な状況を維持して行くなら、利上げの可能性は高いと思われます。ここで大事なことは、利上げのタイミングだといわれています。NY連銀のダドリー総裁は「早すぎる利上げ」と『遅すぎる利上げ』では、明らかに前者のリスクが高い、と言っています。イエレン議長も、そのあたりは良く考慮しているようで、自分の発言がマーケットに与える影響を十分知っているようです。2015年中の利上げの可能性は高いですが、その時期はマーケットコンセンサスの年央より、後にずれ込むシナリオも考えておくべきでしょう。

長期間にわたった超緩和策の終焉となれば、ヘッジファンドなどの投資家が想定以上にオーバーアクションを取る可能性が高くなります。特にアメリカの投資家たちの間での合言葉は、「FRBには逆らうな」です。バーナンキ前FRB議長のtapering【量的緩和の段階的縮小】示唆で、2013年5月23日の日経平均が1,143円安になったことは記憶に新しいですが、FRBの発言次第で相場が乱高下することは変化ないとみるべきでしょう。

日銀は、お題目の「CPI(消費者物価)2%」を目指して黒田バズーカを使いながら異次元緩和を遂行中です。これに対し民間エコノミストの2016年第1四半期の予想は、1.28%に過ぎません。さらに最近のサウジの石油戦略変更に伴う原油価格の下落を加えると、目標の2%達成は至極困難な状況です。これを回避するために、異次元緩和PartⅢを行う蓋然性は非常に高いとみるべきです。

6.ヘッジファンドの動向が日本株の帰趨を握る

2014年の株式相場はボラティリティ(相場の動き)が非常に高い1年でした。大納会は1万7450円77銭で終了しましたが、今年1年間の振れ幅を見ると4,145円と高いボラティリティを示しています。

まず、新年早々、外国人の大幅売り越しがあり、1月から2月第1週までに現物、先物合わせて2兆8千億円程度の売り越しとなりました。2013年秋から大納会にかけては、5兆2千億円程度の買い越しだったので、突然の方向転換に市場は大きく戸惑いました。4-5月に日経平均が14,000 円となり、初夏まで調整色の濃い相場になったのも、外国人の売りスタンスによるものでした。その後、8月第2週から9月第3週にかけて2兆5千億円程度の買い越し、10月は3兆1千億円程度の売り越しと振幅の大きいマーケットとなりました。

その後、黒田バズーカの第2弾が発射されると、その後の3週間で4兆5千億円弱の買い越しと膨大な買い越しとなりました。この数字は、30年以上相場を見ているトレーダーでも経験のない事態だったようです。

このように、外国人の中でも攻撃的な売買を行っているのは、言うまでもなくヘッジファンドで、彼らはデリバティブ中心に極めて短期間に、大量の売買を繰り返します。ロングオンリーと言われるペンションファンド(年金基金)やミューチュアルファンド(投信)とは売買のスピードと量が全く異なり、最新のコンピュータソフトを使ったアルゴリズム売買で武装しているので、彼らと対等に戦っても、一般投資家は勝てる理由がないのです。

外人投資家の6-7割がヘッジファンドによるものと推測され、結果的には彼らが買えばマーケットは上昇し、彼らが売ればマーケットは下がる、の繰り返しでした。2015年も同様の展開となる可能性が大です。

7.GPIFや日銀の動きに左右される官製相場になるか?

ヘッジファンドの向うを張る買い勢力としては、信託銀行(年金勘定)があります。2014年12月上旬までの統計では、現物株で2兆3千億円程度の買い越しでした。生損保、都地銀、投信と総売りの状態で、さらに個人投資家も「押し目買い、高値売り」で動くので、4兆8千億円程度の大幅売り越しでした。2015年は、買い主体として、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に代表される年金と3兆円のETF買い入れを発表している日銀の2本柱となるでしょう。

8.2015年の株式相場はどう動く?

まず、OECDの予測による2015年の日本の経済成長率が0.8%であり、これを前提に考えると、普通株価上昇のシナリオは考えにくいものです。

しかし、それを覆す威力があるのが最近の日銀(黒田総裁)の動きです。日銀が株式市場に直接手を突っ込み、マーケットを動かす是非は別にして、その威力はすさまじいものがあります。「マネタリーベース80兆円増、長期国債80兆円買い入れ、ETFの3兆円買い入れ」は、国債市場(金利市場)を文字通り異次元の世界に連れていき、信じられない程の低金利時代になっています。そうなると、株式市場は上昇し、さらに大型補正予算が組まれると景気が刺激され、これに円安が加わると輸出企業中心に企業業績の向上が見込まれます。さらに原油安のメリットが加われば、株価は上昇方向に動くことになるでしょう。

ただし、前述の通り、ヘッジファンドが「リスクオフモード」で絡んできた場合、ボラティリティが著しく高くなるので、下振れリスクを多めにとることが肝要です

また、原油安が資源国、新興国の混乱も世界を揺るがす要因になるでしょう。長期化するロシアとウクライナの紛争は、EUの本格的経済支援がなければ、危機的な場面も到来することも考えられます。当事者のロシアもルーブルは史上最安値を更新している状況で、2015年のリセッションは不可避です。しかしプーチン大統領もしたたかです。この状態が続けば、軍事オプションに踏み切る可能性は十分あるでしょう。このようなリスクシナリオはヘッジファンドの格好の触手となるでしょう。

2015年の干支の未年は、「辛抱」がキーワードとなるのでしょうか。十二支の相場格言は、「辰巳天井、午尻下がり、未は辛抱、申酉騒ぐ、戌笑い、亥固まる。子は繁盛、丑躓く。寅千里を走り、卯跳ねる」です。いわゆるアノマリーの一つではあるのですが、2020年の東京オリンピックの年(子)までの助走期間として、相場は上昇基調ですが、海外からの波乱要因で大きく下げる場面もある、そんな1年になるのでしょうか。

さて、今年1年、色々ありがとうございました。今年の2月に会社を設立し、2014年は少しずつですが、足下を固めた1年となりました。

来年2015年は、しっかりと先を見据え、飛びすぎることなく、確実に上昇気流を捕まえながら前進する1年といたす所存です。

皆様方も、どうか良い1年であります様、心からお祈りしております。