FP法人㈱マネーデザインの 中村です。
 先週も西日本では、大雨が多発し、広島では大規模な災害となってしまいました。今年は太平洋高気圧の張り出しが弱く、西日本に南から暖かく湿った空気が流れ込みやすく、台風の通り道になったり、前線がはりついたりして、大雨となりやすい気圧配置です。夏もそろそろ終わりに近づき、これからしばらくは秋雨前線が主役になりそうです。先週土曜日の23日は二十四節気で「処暑」。暑さをやり過ごし、少し一服出来る季節です。確実に暦の上でも秋が近づいています。
 さて、前回から相続税に関する基礎知識とそれを解決する一つの方法としての賃貸併用住宅についてお話しております。今回は、その賃貸併用住宅について、少し具体的にお話していきます。

1賃貸併用住宅の意義

 もし皆さんが土地をお持ちでそれがすぐに稼ぐことができないか、と考えるときに真っ先に思い浮かぶのが賃貸併用住宅かもしれません。そしてすぐに思い浮かぶ住宅メーカーさんとしては、旭化成のヘーベルハウスでしょうか。
 今この賃貸併用住宅に注目が集まっています。それは単に副収入を稼ぐだけでなく、相続税等税金対策の選択肢の一つとして考える方が多くなってきたようです。
 住宅産業新聞社によれば、旭化成ホームズの賃貸併用住宅の2014年度連結業績計画によると、2014年度売上高は前期比3.1%増の5,510億円で過去最高を更新する見通しだそうです。
 賃貸併用住宅が人気を博している理由は、まさに先ほど書いたように『相続対策と老後の収入対策』です。税金対策と年金不足対策によい商品と考えられているからです。
 ですので、子世代の住宅取得援助のための住宅資金贈与の優遇枠拡大という、積極的な親世代から子世代への資金移動というのではなく、まだ親世代も自分たちの年金不足に何とか対応したい、とするニーズに賃貸併用住宅が活用されています。
 以前のBlogにも書きましたが、今後はさらに、
「基礎控除額の4割減」(法定相続人の基礎控除が現行5,000万+法定相続人 x 1,000万から改定3,000万+法定相続人 x 600万)
「最高税率の引き上げ」
「死亡保険金の非課税対象の縮小」が予定されています。
 このすべての税制改正が行われると、現在4%程度の課税対象者が6%まで上昇するといわれています。
 しかし、この6%はあくまで全国平均の数値で、東京都23区内は4人に1人課税されるとの試算もあります。
 そこで相続対策として、相続財産の圧縮もでき、なおかつ家賃収入を得られるので、老後の収入対策にもなる賃貸併用住宅に人気が集まるのは自然の流れかと思われます。

2 賃貸併用住宅の一般的なかたち

 賃貸併用住宅を建てた場合は不動産会社とサブリース契約を結ぶのが普通です。
 サブリース契約とは、不動産会社がオーナーから物件を借り上げ、その借上げた物件を入居者へ転貸することをいいます。当然大家さんは、直接入居者に貸した時の家賃と比べて、受け取る家賃収入は低くなりますが、不動産会社が物件を借上げてくれるので、空室の心配はなくなり、安定した経営を行うことができます。
 勿論、サブリース契約を必ずしも締結する必要はありません。対象物件が駅近くで、入居者がすんなり決まるような場所にあるものでしたら、普通に入居者を募集すればよいことです。

3.サブリースのデメリット

はじめて賃貸住宅経営をするとき、大家さんが一番怖がるのは、空室リスクだと思います。その恐怖を取り除く一手段がサブリース契約です。 
 しかし、サブリース契約をすると、家賃の1割から3割ぐらいが不動産(管理)会社のFeeとして差し引かれるのが一般的です。
 また、不動産(管理)会社が家賃保証をするといっても、10年先、20年先もいまと変わらない家賃が保証されているわけではありません。
 よくあるケースは、二年毎に保証家賃は見直しされ、10年毎には不動産会社が提案する大規模修繕工事を行なわなければいけないなど、細かい条件がつけられているので契約に際しては十分注意が必要です。

4. オーナー住居と賃貸住居との物理的、メンタル的な近さ

 また、賃貸併用住宅ではオーナーと入居者の距離が近いのも大きな特徴です。
 
 最近では、間取り的な近さは、オーナ居室部分と賃貸部分の間に階段や物入れ等、緩衝となる部位を入れるなど、いろいろな工夫で、音が直接響かないように設計を行います。また、1階と2階で分ける場合も緩衝材をうまく使うなどして、音のトラブルを避けています。
 しかし、もし、入居者がトラブルメーカーで、直接的には管理会社が間に入り、家賃の集金やクレーム対応を行うとはいえ、滞納や騒音トラブルを起こしている入居者が同じ屋根の下で暮らしているというのは、精神的にもあまり気分がいいとは言えないでしょう。
 このように、入居者の生活トラブルを抱え込むこともデメリットとの一つとして事前に考慮しておくポイントです。
 賃貸併用住居は、特に広めの土地をお持ちの方が住み慣れた地元から離れたくない、といったケースでの土地の有効活用の選択肢としては、お勧めの手段です。しかし、上記のデメリットも考えながら、プロジェクトを進めていくべきかどうか、ご自身で慎重に判断すべきだと思います。
 弊社は、オーナー様が直面する課題を整理し、その解決方法をまとめるお手伝いを丁寧にさせていただきます。どうぞお気軽にお問い合わせください。
 では、素敵な一週間をお過ごしください。