不動産契約書に記載される住宅ローン条項とは

不動産の購入には通常、全額現金で購入するケースはまれで、金融機関からの融資を受けるのが一般的です。しかし、融資の審査は売買契約締結後に行われるため、契約前に融資の可否を確認することはできません。そのため、売買契約では金融機関からの融資が承認されなければ契約が白紙に戻るという取り決めが一般的です。この取り決めをローン条項と呼びます。今回は、不動産契約上重要なローン条項について詳しく見ていきましょう。

ローン条項とは

ローン条項は、買主と売主の間で合意され、不動産の売買契約書と重要事項説明書に明記される重要な条件です。これによって買主は、融資が不承認となった場合には契約を解除する権利を持ちます。ただし、具体的な内容は契約ごとに異なるため、契約書をよく確認することが重要です。

ローン条項では、以下のような内容が含まれることがあります:

➀融資の承認条件: 買主が融資を受けるために必要な条件や審査基準が明記されます。例えば、所得や信用評価などが融資の可否に影響する場合、それらが記載されます。

②融資不承認時の解約条件: 買主が融資の承認を得られなかった場合、契約を解除することができるかどうかが規定されます。通常は、融資が不承認となった場合には契約が白紙に戻ることが合意されます。

③解除通知期間: 買主が融資不承認に基づく解約をする場合、何らかの期間内に通知する必要がある場合があります。これにより、売主に対して合理的な通知期間が確保されます。

昭和48年という昔の建設省(当時)の通達により、ローン条項は不動産売買契約で一般的に使用されるようになりました。この通達では、ローンが不成立の場合に売買契約を解除できることと、手付金が無利息で買主に返還されることが明記されています。

ローン条項の種類

ローン条項には、解除条件型と解除権留保型の2つの類型があります。

(1)解除条件型とは

解除条件型では、ローン不成立時に契約が自動的に無効になります。

住宅ローンの解除条件型は、不動産売買契約において、ローンが成立しなかった場合に契約が自動的に解除されるタイプのローン条項です。具体的には、以下のような形式で表現されることがあります。

「○年○月○日までに○○銀行○○支店の融資が不成立であった場合、本契約は当然に効力を失う。」

このような解除条件型ローン条項では、買主が契約解除の意思表示をする必要はありません。契約締結後にローンが成立しなかった場合、自動的に契約が無効となります。このため、買主は売買契約に基づく支払い義務を免れることができます。

ただし、解除条件型ローン条項の場合、買主が別のローン先を見つけた場合でも、法的には既に売買契約の効力が消滅しているため、売主との間で新たに売買契約を締結し直す必要があります。

解除条件型ローン条項のメリットは、買主が契約解除の意思表示を忘れても支払いを免れることができる安心感や、迅速に法的関係を確定できることです。ただし、新たなローン先を見つけた場合でも手続きが必要であり、契約の再締結が必要になる点には注意が必要です。

(2)解除権留保型とは

解除権留保型では、買主が解除権を行使しなければ契約は有効です。どちらの類型を選ぶかは利害得失を考慮して判断する必要があります。

解除権留保型は、不動産売買契約において、買主がローンを組むことを条件として契約を成立させるタイプのローン条項です。具体的には、以下のような形式で表現されることがあります。

「本契約の成立は、買主が○○銀行○○支店より融資を受けることを条件とし、当該融資が成立しない場合は、売主は本契約を解除する権利を有する。」

このような解除権留保型ローン条項では、買主がローンを組むことが条件となっており、契約成立後に買主がローンを組むための審査や手続きを進めます。もし買主がローンを組めずに融資が成立しない場合、売主は契約を解除する権利を有します。

買主は、ローンの組み込みに必要な審査や手続きを適切に行い、条件を満たすよう努める必要があります。また、ローンの審査期間や融資の確定に時間がかかる場合、売主と買主は期限や条件を調整することもあります。

解除権留保型ローン条項のメリットは、売主が買主のローン組み込みの進捗状況を確認できる点です。売主は買主のローンの審査状況を把握し、必要に応じて解除権を行使することができます。また、買主もローンの審査や手続きに万全を期して進めることで、安心して契約を進めることができます。

ただし、解除権留保型ローン条項の場合、買主はローンの組み込みに必要な条件を満たすことや、ローンの審査を適切に進めることが重要です。

ローン条項の適用時には、ローンの不成立の原因を問うかどうかが問題となります。また、ローンの一部不成立の場合にも条項の適用が認められる傾向がありますが、不足額が極めて僅少である場合には例外的な判断がなされることもあります。買主はローンの申請とローンが実行されるよう努力する義務があります。

住宅ローンを組むときには、不動産売買契約書と重要事項説明書にローン条項が記載されます。このポイントをしっかりとおさえた上で契約に臨むことが大切です。