FP法人(株)マネーデザインの中村です。GW後の日常生活、如何お過ごしですか?
 さて、今日は、昨日の続き、~アベノミクス再点検~ #3 金融政策 で具体的に我々の生活にどのような影響があるのか、考察してみたいと思います。
 昨日の記事では、日銀の金融政策が無担保コール翌日物金利の調整からマネタリーベースへ移行と書きましたが、これはどういうことでしょうか?
 マネタリーベースとは、日銀当座預金と日銀券などを合わせた残高を年60-70兆円ペースで増加させることで、この政策実行により、マネタリーベース(2012年末実績138兆円)は13年末に200兆円、14年末では270兆円となる見込みとしました。
 2013年4月の発表文によると、日銀は「量的・質的金融緩和」を導入。消費者物価 の前年比上昇率2%という「物価安定目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現すると表明しました。そのための手段として、マネタリーベースは2年間で約2倍に、日銀の国債保有額とその平均残存期間を2年間で2倍以上に拡大することとした訳です。
 日銀当座預金とは、信用創造の源となるもので、これが増えると一般的には金融機関の融資も増加して、経済にレバレッジ(てこ)がかかり、景気が良くなるという理屈です。
 実際の日銀当座預金残高の推移を追ってみますと、2012年末に約40兆円だったのが、2014年の直近では約120兆円と約3倍も伸びました。
 もう一つ増加の意味は、日銀が市中の金融機関(都銀、地銀、第二地銀、信用金庫等)に対して、もっと市中にお金を貸しなさい、というメッセージが込められています。
 その一方、市中銀行の貸し出し残高は実際にはあまり伸びていません。2012年末で約460兆円だった残高が2014年直近では約476兆円と3.5%しか伸びていません。
 これは、大企業がすでに資金をあまり必要としておらず、また中小企業には貸し倒れのリスクが付きまとうので、銀行としては中小企業への融資には、積極的になれない事情があるのです。
 しかし、銀行は主に高齢者から低金利で預金を集めていますので、これを元手に何とか利鞘を稼がなくてはならないのが現状です。
 そこで、銀行は比較的安全な日本国債を買って運用しているのです。
 ところが日銀はそうはさせまいと、マーケットから国債を吸い上げ(買い取り)、現状は日本の借金1,066兆円のうち約2割が日銀が保有という状況になっています。
 
 その副作用として、約1年前の国債マーケットでの値付けが乱高下したことは、記憶に新しいと思います。
 日本に限らず、各国の財政当局は、株式市場よりも国債市場をより重視します。極論を言いますと、株式市場の上げ下げには、財政当局はあまり関心を持ちません。それよりも国債市場がどうなっているのか、そこが一番の関心事なのです。
 ですので、経済の現状をみるときには、株式市場よりも国債市場を観察しなければなりません。
 いささか脱線しましたが、では日銀当座預金残高の伸びと銀行の企業への融資残高の伸びの著しいギャップは今後どうなるのでしょうか。
 
 筆者は、今後銀行は不動産市況が回復しているのに合わせ、地銀を中心に、不動産投資信託(REIT)や現物不動産等への貸し出しが積極化すると考えています。
 現に、REIT全体の値動きを示す東証REIT指数は、5月1日に心理的な節目である1500を上回りました。
 
 金融機関にとって、REITの分配金(株式の配当に当たる)の高さは、とても魅力的です。1日現在の平均分配金利回りは約3.7%。新発10年物国債の利回りが0.6%程度なので、その優位さがわかりますよね。
 
 もしかすると、これから不動産投資をお考えの方々には、融資の面では有利に働く可能性が出てきました。オリンピックの前で融資面でも後押しとなる事も考えられます。現にある東海地方の地銀が不動産融資に特化した店舗を東京に出店した、ということも耳にしています。
 収益不動産をより具体的にお考えの方は、是非弊社へご相談下さい。