定年後に住宅は購入できるのか退職金で住まいを買うべきかを解説 

定年後は、通勤がなくなることで生活が一変します。また、退職金としてまとまったお金があれば、物件購入もしやすい時期です。ここでは、定年後の住宅購入や住み替えにおいて、押さえておくべきポイントをご紹介します。

定年後の住まいの考え方

定年は、人生の区切りのタイミングです。あなたの勤務先によって60歳なのか、60歳を過ぎても雇用延長の形態で65歳まで働くのか、それとも全く別の会社で働くのか、そして起業するのか、などでライフスタイルも大きく変わってきます。

定年後の住まいを考えるうえで最も大切なことは、この自分と家族のライフスタイルをどのように変化させるのか、です、

変化させる、という能動態で書いたところがミソです。すなわち、自分で考えることが大事なのです。

もし、今まで役所や大企業で勤務していた場合、天下り先、子会社、関連会社、出向先、取引先といった仕事をする場所まで会社が用意してくれたかもしれません。

しかし、定年後は、頼れるのは自分しかいません。今まで勤務していた会社の名前の威光で動いていたものが、すべて外され、ご自身の力で生活を切り開いていくことが何より大切になってきます。

まず、意識の改革から始めないと、その後のライフスタイルがぶれてしまうことにもなりかねません。

それを踏まえた上で、どのような住環境を望むのか、しっかりと考えていく必要があります。

様々なライフスタイルが考えられます。例えば、今まで自分の得意としていた分野を生かして、今住んでいるところ、もしくは通える範囲で事務所を賃貸して起業する、今まで続けてきた趣味を生かして場所にこだわらず起業する、顧問や役員といった形で、別の会社に就職する、そして全く何もしない、好きなことだけをする、これも立派な選択だと思います。

その中で、今までの住まいが賃貸物件だった、もしくは分譲マンションや戸建てだったが、ライフスタイルの変化により、まったく別のところに移る、もしくは家の大きさをダウンサイジングする、といったことも考えられます。

また、親の介護が本格的に始まり、その関係で実家の近くに移り住む、または実家に引っ越すケースもあるかもしれません。

そして、今回のコロナの影響で、都会に住むことを当たり前と思っていた価値観が大きく崩れ、都会の「密」を避け、地方の「疎」を求める動きも出てきています。

このように定年をきっかけに住まい方を変えるという方も多くいます。

ここに興味深いデーターをご紹介しましょう。リクルート住まいカンパニーがまとめた、シニア層の住宅購入の実態です。

リクルート住まいカンパニー シニア世代の住宅購入 

この調査から見えることは、住宅の第一取得世代は30歳台、第二取得世代はシニアカップルで、「住まい取得2回目以上」が75%と高い割合となっています。

すなわち、60歳以降で、住み替えを行った層がかなりの数いるということです。

その理由は、様々でしょう。

①子供の成長で、ダウンサイジングが適当となった

②ライフスタイルの変化により、求める場所、環境が現状と合わなくなってきた

③マネープランに余裕を持たせたくなった

④家を資産と考え、今まで賃貸暮らしだった環境から、持ち家に替える

⑤今までの家の間取りがライフスタイルに合わなくなってきた 間取りが良くない

⑥設備の老朽化により、定年を機に家を住み替える 建て替える

⑦老後の身体的な衰えを踏まえて、バリアフリーの設備のついた家に住み替え

⑧65歳で新規の賃貸住宅への入居は難しくなってくる。特に首都圏では、65歳以上という条件だけで機械的にはじく管理会社や賃貸物件のオーナーが多いので、自己所有物件に移る

などがあげられます。

100家族いたら、100通りの住み替え理由が出てきます。その思いを実現するか、それとも我慢して今の住居で我慢するか、これもまたライフスタイルの選択なのです。

定年後に実際に住宅購入できるのか

では、実際定年後で家を購入することを念頭に様々なシミュレーションを行ってみましょう。

60代で一戸建てを購入する場合、今まで貯めてきた預貯金や定年時に出る退職金などの自己資金、そしてこれまで住んでいた住宅の売却代金を当てるのが一般的です。

通常、家を購入するときに真っ先に考えるのは、住宅ローンですが、その審査基準は金融機関によって異なります。一般的にどの金融機関も75〜80歳をローン完済時期の上限としています。特にフラット35などは、80歳完済を条件にしています。そのような条件下のため、60代で新規に高額のローンを組むのは難しいのが現状です。

従って、今まで賃貸物件で生活してきたシニア世代は、比較的キャッシュに余裕があることが多いですので、これに退職金をプラスして、購入する選択肢も大いにあり得ます。

こうすることで、残りの期間、賃料に悩まされることなく、管理費、修繕積立金、駐車場代、固定資産税といった、最小限の維持コストで、安心が手に入るのは、大きなメリットと考えます。

そこでもう一つ考える必要があるのは、老後の生活コストです。

一戸建てやマンションを購入したあとの生活も視野に入れ、余裕を持った資金計画を立てるべきです。食費や光熱費といった毎日の生活費は、加齢とともに縮小する傾向があります。一方、高齢になると医療費が掛かりやすくなり、病気や怪我で思わぬ出費が必要になるケースもあります。

定年退職後は収入も限られてくるので、ある程度の貯蓄は確保しておきたいものです。

もう一つの家を買うメリット

あまり知られていませんが、お子様がいる場合、家を購入するメリットは相続税対策です。

ご存じの方も多いと思いますが、2015年1月より、相続税および贈与税の大きな改正がありました。

相続税を計算する際の基礎控除額がこれまでの「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」から、法改正後「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に変わっています。この税制改正により、相続税の納税対象となる人が大幅に増えました。

すなわち相続税が増税となったのです。これは、首都圏に普通の一戸建て、マンションを所有している場合、今までは相続税の対象から外れていた物件が、これからは相続税の対象となるケースが出てきています。

配偶者や子供に相続税の負担を掛けないためにするために、住宅購入が相続税対策のひとつになります。

不動産の評価は、実際に購入や建築に掛かった費用ではなく、固定資産税評価額に基づいた計算を行います。国税庁のサイトに行くと、路線価が出ていますので、簡易的な相続税を計算することはできます。

国税庁路線価マップ

一般的には、土地の価格は公示価格(国土交通省によって土地ごとに定められた基準価格)の7割ほど、建物は建築費用の5〜7割ほどで計算されるケースが多いです。

さらに、持ち主が居住している場合は、「小規模宅地の特例」が適用され、330平米までの土地に関して80パーセントの減額が受けられます。そのため、一戸建ての評価額を購入金額の半額程度に抑えることができます。

過去に、タワーマンション購入が相続税対策になるといって、高い階を買えば買うだけ相続税対策になるともてはやされましたが、国税の新たな通達で、それも難しくなってきました。

退職金で家を購入はありか

退職金は、一般的には老後生活資金のために使うのが一般的です。それをすべて住宅購入に充てることは、かなり危険と言わざるを得ないでしょう。

虎の子の資金を、すべて住宅資金に充てると、その後の生活費がかなり圧迫されます。

もし、上手い具合に住宅ローンを借りることができたら、それを目一杯有効活用することをお勧めいたします。

それは、これだけの低金利下では、調達コストが著しく抑えられます。もしそれを繰り上げ返済に使ってしまうと、いざというときの資金に困窮することとなります。

一番の理想的な形は、今ある所有住宅の財務状況が債務超過(現在の売却時価<住宅ローンの残高)でしたら、なかなか売却は厳しい肝要です。

日本人と心理としては、借金は悪だ、という固定観念がすりこまれていますが、年金その他で返済可能の状態でしたら、無理に繰上げ返済せずに運用と絡めてお金を目減りさせない方法を取るべきです。

まとめ

このように、定年後に家を買うことのメリット・デメリットをあげましたが、何回もお伝えした通り、最後はあなた自身の決断です。

これからのライフスタイルを決めた上で、考えてみてはいかがでしょうか。

執筆者 中村 伸一
AFP 宅地建物取引士 日商簿記検定2級 証券外務員1種 生命保険募集人(シニアライフコンサルタント) 変額保険販売資格 高齢者住まいアドバイザー