定年後の住み替えという考え方は古いか?

Afterコロナの時代、今までのように定年前と定年後という切り分けは、全く意味をなさない時代と言えるでしょう。人生100年時代と言われる今、50~60歳に家を住み替えようかと考えている方々は、今後のライフデザインの決定がとても大切です。ここでは50~60歳代の住み替えをテーマに、押さえておくべきポイントを見ていきましょう。

定年後の住まいの考え方

Before コロナの時代では、首都圏や大阪圏、名古屋圏、博多圏といった中心都市に向かって、定年まで通勤することが、何の疑問も持たず毎日の日常として続いてきました。

しかしAfterコロナの時代では、そんな通勤前提の生活パターンが崩れ、在宅勤務に移行されている方々も多いとのではないでしょうか。

今までの常識が全く崩れ、ニューノーマルと呼ばれる新しい生活習慣が、新型コロナによって後押しされています。

今までは、60歳もしくは65歳まで勤務して、その後は自分の好きなことをして、セカンドライフを楽しむ、といったライフデザインが一般的でした。

しかし、Afterコロナの時代は、定年まで待つことなく、リモートワーク制度やシェアオフィスを使って、首都圏などの都市中心に毎日勤務する必要がなくなってくる時代がひたひたと押し寄せている状態です。

また、定年後のセカンドライフにおけるライフデザインも、大きく変わってきています。

かつて老後の生活を支えるのには十分だった公的年金は、少子高齢化がますます進むことで、自助努力が求められ、老後2,000万円が公的年金にプラスして必要だという審議会の報告書が物議をかもしたのは記憶に新しいところです。

今後は、60歳、もしくは65歳といった定年前と定年後をはっきり区別するライフデザインではなく、その境目は曖昧模糊となり、個々人のライフデザインによって多様性が尊重される時代に移行していくのではないでしょうか。

例えば、「サザエさん」のお父さんの波平さんは、54歳という設定で、放映開始の昭和40年代は、会社の定年は55歳、さらに男性の平均寿命は60歳後半、女性は70歳前半という時代でした。

定年を間近に迎えている波平さんが、お茶の間で新聞を読んでいる姿を現代に置き換えると、70歳くらいのイメージでしょうか。

平均寿命が男性83歳、女性87歳を過ぎている現代では、50歳という年齢は、まだまだ先がある年齢なのです。

そのような時代背景においては、「定年後の住まい」という区分け自体もあまり意味のないものになりつつあります。

例えば、一時代までは、新卒で就職した会社で定年まで勤め上げ、用意してくれた企業年金や退職金を受け取り、その後の公的年金と合わせてリタイアメント後の生活を生きていくライフデザインが通用したのは団塊世代までで、今50歳の方々は、このようなライフデザインを描いている方はほんの一握りだと思います。

進化論を唱えたダーウィンの有名な言葉は、「唯一生き残れるのは、強いものでも賢いものでもなく、変化できるものである」という言葉を残しています。

このように、時代背景が変われば、それに即して私たち自身も思考を変えていくことがとても大切だと思います。

一例として、現役時代から、海の匂いを感じながら住む、山の稜線に陽が傾くのを感じられる場所に住む、おいしい食べ物が多いところに住む、自分で畑作ができるところに住む、などそのパターンは個々人のライフデザインの考え方によって、変わってきます。誰にも邪魔されることもなく、それを実行するかどうかは、ご自身の考え方とそれを実行するかにかかってきます。

今までは、周りの環境やタイミングといったものによって住む場所さえ制限されていましたが、これからの時代は自分の住むところは自分で決めるといった、主体性がはっきりと求められる時代に大きく舵を切っていく予感がします。

定年後に住宅を購入するのもありか?

このように、これからは、ますます定年前、定年後といった考え方の前提が大きく崩れる時代では、その区分けはあいまいになってきました。

そこで仮に一つの節目である60歳以降に、自宅をどう考えるのかは、良い機会です。

国土交通省発表の「平成27年度 住宅市場動向調査」によると、住宅の一次取得者(はじめて住宅を購入する世帯)の年齢は、マンションや一戸建てなどすべての住宅形態で、30代の占める割合が最も高いです。次に二次取得者(住宅の購入が2回目以降となる世帯)を見ていくと、分譲戸建住宅(建売住宅)以外の注文住宅・分譲マンション・中古マンション・中古一戸建てにおいて60代以上が占める割合が最も高くなります。特に注文住宅は他の住宅形態に比べて60代以上の割合が最も高く、52.4パーセントを占めています。つまり、60代で「終の棲家」となる住宅を購入するのは、珍しいことではありません。

2020年3月に国土交通省から発表された、2019年の住宅取得動向調査によると、注文住宅(立替)、リフォーム住宅は、60歳以上が最も多い年代です。さらに二次取得者は、注文住宅、分譲マンション、中古戸建住宅、中古マンションにおいて、60 歳以上が最も多いことが分かりました。

したがって、世の中の傾向としても60歳を契機に住み替えやリフォームを検討することが多いことが分かります。

家の住み替えを資金面から考える

すべての家族構成をパターン化するのは困難なので、夫、妻、子供2人のパターンで考えていきましょう。

今まで住んでいた、郊外のマンションもしくは一戸建ては、子供2人が独立して、家を出ていったあと、夫婦2人で済むには少し多く過ぎるかもしれません。

もし、今の住居が持ち家であれば、まずいくらで売却できるのかを計算します。

これを不動産の査定といいますが、現実はご自身が思い描いていた金額より高く売却できることはレアなケースです。大体が想定していた金額より低くなります。

さらに、売却には不動産の仲介手数料がかかります。

もし住宅ローンが完済し終わって、3,000万円で物件が売れる場合、手残りの金額は、約2,904万円です。

次の物件を買う頭金、もしくはこの金額の中に収めるのであれば、住宅ローンを組まずに物件購入ができます。

しかし、この時2,500万円の物件を購入する時は、約81万円の仲介手数料がかかります。

これを計算すると、買替にあたり500万円の手取り金額から2軒分の仲介手数料が引かれ、手残りは323万円となります(単純に表すため、税金は除いています)。

このパターンは、不動産をダウンサイズすることで、その差額を老後資金にプラスとなるようにする手法です。

ここで、大切なのはその後どこに住むか、という事です。

せっかくダウンサイズすることを決めたのですから、今度はどこに住むかは、とても重要な選択肢となります。

これにより、生活費そのものを下げることが可能になるからです。当然ですが、都心よりも地方の方が生活費も抑えることができます。さらに最近は移住を前提にした場合、自治体によっては公的支援も出るケースもあります。

仕事中心のライフスタイルから、比重を余暇に移す、もしくは時間の流れるスピードを少しギアダウンしてゆっくりする、これは年齢を重ねる上で当然考えることです。

アメリカでは、退職したらリタイアメント・コミュニティへ移住する、という考え方はごく一般的です。この行動は富裕層しかできない、というのがアメリカでは共通認識のようですが、日本では「お金を節約する行動」として多くの人が使えるのではないかと思います。

定年後に家を買うのにあてにできるお金

実際、家を購入する際に、プラスアルファの資金が準備できればさらに安心して購入することができます。

その代表的なものが、退職金と相続です。

  • 退職金

昔と比較して退職金が出る企業は少なくなって感があります。しかし、幸運にも退職金が出るのであれば、これを使って有利な住宅の買い替えができることも事実です。

退職金は、退職所得といって、所得税法上、有利な税率で計算されるので、手残りが多くなります。

  • 相続

50~60歳は親からの相続が発生する可能性が高い年齢です。もし、一定の資産をお持ちの親御さんがいらっしゃる場合、何も対策をしないと相続税がかかるケースがあります。特に2015年の相続税改正により、東京やその近郊に一戸建てをお持ちの場合、相続税の対象となる可能性があります。

その場合、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受ける場合は、最大で3,000万円の住宅資金取得贈与や相続時精算課税制度を使うことで相続税を小さくできる可能性があります。

また、小規模宅地等の評価減を上手に使いながら、住み替えや子供たちに相続するといったことも考えられます。

まとめ

このように、住宅の住み替えを行うにあたり、様々なことを考える必要があります。マネーデザインでは、ライフプランを作成することで、住み替えが今後の生活にどの程度インパクトを与えるか、また親御さんからどのように相続をすれば、上手なマネープランができるかを総合的な視点からコンサルティングさせていただきます。

執筆者 中村 伸一
AFP 宅地建物取引士 日商簿記検定2級 証券外務員1種 生命保険募集人(シニアライフコンサルタント) 変額保険販売資格 高齢者住まいアドバイザー