親から子へ家模型を手渡し

親名義の家を相続した場合、相続税はどのくらいかかるのでしょうか。また、税金をかけずに相続する方法はあるのでしょうか。

今回は、実家相続時の相続税について、注意点や税金を抑えるポイントを交えて紹介します。

実家相続時の相続税はいくら?計算方法を紹介

相続した実家にかかる相続税は、いくらになるのでしょうか。まずは、相続税の計算について解説します。

相続税の計算に必要なもの

親が亡くなり、実家を相続する時の相続税を計算するためには、以下の3つを調べる必要があります。

  • 実家の課税評価額
  • 基礎控除額
  • 課税される金額に対応した相続税率

これらがわかれば、実家を相続する時の相続税を知ることが可能です。それぞれ、どのように調べればよいのでしょうか。

実家の相続税評価額の調べ方

まずは、実家の相続税評価額を知る必要があります。正確には、建物と土地両方の相続税評価額です。

建物の相続税評価額は、毎年送付されてくる固定資産税評価証明書で確認することができます。
建物の固定資産税評価額と相続税評価額は同一価額です。

一方で、土地の場合は、路線価から相続税評価額を計算する必要があります。路線価とは、国税庁が定めた道路に面した土地の価額のことです。

路線価を利用した計算式は以下のようになります。

評価額 = 路線価 × 面積 × 奥行き価格補正率
(補正率は土地の旗竿地などの特殊な地形の場合に使用する)

路線価は、国税庁のHPで調べることができます。

基礎控除額の調べ方

法定相続人(相続する権利のある人)の人数によって基礎控除額が違います。

基礎控除額の計算は以下のようになります。

3,000万円+600万円×法定相続人の人数

例えば、法定相続人が4人の場合には、5,400万円の基礎控除があります。つまり、5,400万円を超えた相続財産が、課税される金額です。

課税される金額に対応した相続税率の調べ方

相続税率は、課税される金額によって変わります。税率は以下の表を確認してください。

課税される金額 税率 控除額
1000万円以下 10% 控除なし
1000万円〜3000万円以下 15% 50万円
3000万円〜5000万円以下 20% 200万円
5000万円〜1億円以下 30% 700万円
1億円〜2億円以下 40% 1700万円
2億円〜3億円以下 45% 2700万円
3億円〜6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

また、基礎控除額と別に金額に応じた控除額があることにも注意が必要です。

相続税の計算例

相続税の計算例を紹介します。

前提条件

  • 相続人3人(妻、長女、長男)
  • 相続割合:法定相続割合
    ※配偶者は常に1/2。
    ※子の場合は、1/2。今回は2人いるため、1/4ずつが相続割合となる。
  • 遺産総額:9,000万円

3,000万円+600万円×3=4,800万円(基礎控除額)
9,000万円−4,800万円=4,200万円(課税価格)

妻  4,200万円÷2(相続割合)=2,100万円
配偶者控除があるため、無税です。詳しくは後述します。

長女 4,200万円÷4=1,050万円
1,050万円×15%−50万円=107.5万円

長男 4,200万円÷4=1,050万円
1,050万円×15%−50万円=107.5万円

法定相続割合は、合意や遺言書で変動します。ただし、遺言などがあった場合でも最低限の取り分(遺留分)が決められているため、相続放棄がない限り、計算に入れなければいけません。

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家の相続で相続税がかからないケース

相続財産や特例制度によっては、相続税がかからないケースがあります。ここでは、実家を相続する時の相続税がかからないケースについて詳しく解説していきます。

小規模宅地の特例で大幅減税

小規模宅地の特例を利用することで、相続税の課税価額を大幅に減額できます。

ただし、小規模宅地の特例を利用するには、宅地の種類ごとに決められた要件を満たす必要があります。

小規模宅地の特例の主な区分けは以下のようになっています。

宅地の利用区分 要件 限度面積 減額される割合
被相続人の事業に使用されていた宅地 貸付事業以外の事業用宅地 特定事業用宅地に該当する宅地 400平方メートル 80%
一定の法人が事業に使用している宅地 特定同族会社事業用宅地に該当する宅地 400平方メートル 80%
貸付事業用宅地などに該当する宅地 200平方メートル 50%
一定の法人に貸付つけられた貸付事業用の宅地 貸付事業用宅地などに該当する宅地 200平方メートル 50%
被相続人の貸付事業用宅地 貸付事業用宅地などに該当する宅地 200平方メートル 50%
被相続人の居住に利用されていた宅地 特定居住用宅地に該当する宅地 330平方メートル 80%

では、実家で利用できる特定居住用宅地とはどのようなものなのでしょうか。

特定居住用宅地

特定居住用宅地は、小規模宅地の特例の類型のひとつで、被相続人等が居住していた住宅の敷地について小規模宅地の特例が認められる類型のことを指します。

特例を利用することで330平方メートルまでの敷地の相続税評価額を80%減額できます。5,000万円の相続税評価額の土地ならば、1,000万円にまで減額できます。

【例】300平方メートルの土地で評価額が4,300万円のケース
(小規模宅地の特例を利用)

4,300万円×80%(減額率)=3,440万円
4,300万円−3,440万円=860万円(特例利用後の相続税評価額)

相続税計算 相続人1人、相続財産は上記の土地のみ

3,000万円+600万円×1=3,600万円(基礎控除)
3,600万円>860万円(課税価格)

上記のように課税価格(遺産額)が基礎控除額を上回らない場合は、相続税は発生しません。

配偶者控除を利用することで相続税がかからないことも

配偶者には、「配偶者の税額軽減」という特例があります。

この制度は配偶者が実際に遺産を相続した場合に、課税価額が「法定相続分」と「1億6,000万円」のいずれか多い金額までは、相続税がかからないという制度です。

実家の相続税評価額が、この金額を超えなければ、相続税はかかりません。

やってはいけない実家の相続。3つの事例

実家の相続では、おすすめできない方法があります。相続時や将来に問題になりやすい実家相続のパターンを、3つ紹介します。

親の名義から相続人の共有名義にする

復数人が実家を相続する権利を持っている場合は、遺産分割で揉めたくないという理由から、共有名義にして相続することがあります。

共有名義にすれば、わざわざ不動産価値を調べて分割する必要がないため、不公平感を感じにくく短期間で相続手続きを進めることができます。

しかし、共有名義にすると、名義人1人の意思で改修や売却をすることができないので、管理が非常に煩雑になります。また、相続人が亡くなった場合には別の相続が発生するため、さらに名義人が増える可能性もあり、問題が深刻化しやすいといわれます。

こうしたトラブルを避けるためにも、できるだけ共有名義は避けるべきです。

とりあえず空き家にしておく

実家を相続して、住まずにそのままにしておくこともおすすめできません。

家に住まなければ、管理が行き届かず家の老朽化が進みます。また、庭の雑草が放置されるなど、管理の不備で近隣の住民に迷惑がかかる可能性があります。
火災などが起きれば管理責任を問われることもあるので、居住や活用の予定がない場合には、早めに売却をした方がよいでしょう。

計画がないまま更地にする

売却や建て直しの計画がない場合は、相続した実家の管理が大変という理由だけで建物を取り壊して更地にする人がいますが、これもおすすめできません。

家が建っていれば、その土地の固定資産税が、更地の場合と比べて格段に安くなるためです。

もちろん、建物にも固定資産税は課税されますが、築年数の古ければ建物自体の価値が低いため、わずかな固定資産税しか請求されないことが多いです。

そのため、安易に更地にしてしまうと、固定資産税が跳ね上がる可能性があります。売却や建て直しする計画がない場合は、建物の取り壊す前に専門家に相談しましょう。

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