登記原因証明情報という言葉を聞いたことがありますか。登記原因証明情報とは2005年の不動産登記法の改正によって設けられた制度で、権利に関する登記のために必要な書類のことです。
不動産を相続する時にも必要なこの登記原因証明情報ですが、用意するのが難しい場合にはどうすればよいのでしょうか。
登記原因証明情報について解説
不動産登記法第61条に、「権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない」とあります。
そのため、相続時に登記を行う場合でも、登記原因証明情報を添付して提出する必要があります。
なぜ法律で、このように定めているのでしょうか。また、具体的にはどのような書類が必要なのでしょうか。
登記原因証明情報が必要な理由
不動産を登記する際には、申請される登記内容が正しいものか判断するために、原則として、登記原因証明情報の提出が義務付けられています。
登記原因証明情報の提出が義務となる前は、登記官が登記書類を確認し、書類に不備がなければ登記を行うことができていました。登記官が登記原因の真偽を確かめることができなかったため、登記を申請する原因が事実でなくても、登記がされていたのです。
そこで、不確かな情報が登記されることを防ぐために、法改正を行って登記原因証明情報の提出が義務化されたという経緯があります。
登記原因証明情報で必要な書類
登記原因証明情報は、売買や贈与、相続によって提出する書類の内容が若干異なります。
必要な書類は以下の表の通りです。
登記原因証明情報 | |
売買 | 報告形式の登記原因証明情報 |
贈与 | 贈与契約書 |
報告形式の登記原因証明情報 | |
相続 | 相続関係説明図 |
遺産分割協議書 | |
被相続人の戸籍謄本 | |
相続人全員の戸籍謄本 | |
被相続人の住民票の除票 |
報告形式の登記原因証明情報には、以下の内容を記載する必要があります。
- 登記目的や原因などの登記申請の情報
- 登記原因となる事実
- 日付
- 提出先
- 当事者の押印(共同で申請する場合は共同申請者全員の押印)
これらの内容が記載されていない書類は、登記原因証明情報と認められない可能性があります。
登記原因証明情報の提出が必要ないケース
法令に別段の定めがある場合には、登記原因証明情報を提出しなくてもよいとされています。
では、どういったケースが登記原因証明情報を提出しなくてもよいのでしょうか?それは、以下の4つです。
- 所有権保存登記をする場合
- 処分禁止の登記に後れる登記の抹消を申請する場合
- 混同による権利の抹消登記をする場合(混同によって権利の消滅が確実なとき)
- 私人の住所変更登記または住所更正登記において、住民基本台帳法に規定する住民票コードを提供した場合
これらの登記では、登記原因証明情報を提出する必要はありません。
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相続時に必要な登記原因証明情報とは
登記原因証明情報がどういったものか紹介しましたが、今回は、とくに相続について詳しくみていきます。
相続登記の申請で登記原因証明情報に該当する書類は、以下の5つです。
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 遺産分割協議書
- 相続関係説明図
ただし、上記の書類以外にも登記原因証明情報として、他の書類の提出を求められるケースがあるので、事前に法務局や司法書士などに確認すると良いでしょう。
遺産分割協議書
遺産分割協議書は、登記原因証明情報の中でも、自分で作成する必要がある書類のうちのひとつです。
遺産分割協議書とは遺産分割をする場合に、遺産分割協議で決めた相続人ごとの相続財産の割合を記載した書類です。したがって、相続人全員で協議を行って作成する必要があります。
遺産分割協議を作成する際は、相続人全員の実印の押印が必要です。
不備があると再度相続人全員から押印をもらう必要があるなど手間がかかるため、記載内容についてはよく確認すると良いでしょう。
遺産分割協議書の書き方の例
遺産分割協議書に記載する必要がある内容は、以下の8項目です。
- 遺産分割協議であるとわかる記載(タイトル)
- 被相続人の住所や本籍地
- 被相続人の死亡日
- 相続人の相続内容を記載(不動産の場合は土地や建物の情報)
- 後日判明した財産について記載
- 作成日時を記載
- 相続人全員の住民と氏名を記載して実印を押印
- 複数枚になる場合には製本して実印で割印を押印
法務局のホームページには遺産分割協議の例が掲載されているため、ダウンロードして使用することができます。
相続関係説明図
相続関係説明図とは、被相続人と相続人との関係を表した家系図のような書類です。
この書類は、必ずしも提出する必要はありません。
ただし、相続関係説明図を提出すると、提出した戸籍謄本を返却してもらえるというメリットがあります。
記載内容は非常に簡単で、以下の5項目です。
- 相続関係説明図とわかる記載(タイトル)
- 被相続人の氏名と住所
- 被相続人の死亡日
- 相続人全員の氏名と住所
- 相続人全員の出生日
相続しない相続人の場合は、住民や出生日の記載は必要ありません。遺産分割協議書と同様に、法務局のホームページからダウンロードすることができます。
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登記原因証明情報について相談するときのポイント
相続登記は登記原因証明情報のように多くの書類が必要で、手続きも複雑です。そのため、専門家に相談することをおすすめします。専門家に依頼することで時間短縮にもなります。
相談の手続きはどの専門家に相談するべき?
相続登記などを相談する専門家は、司法書士がおすすめです。司法書士は、相続登記の代理人申請ができるからです。
ちなみに司法書士とは、司法書士法にもとづく国家資格で、裁判所や法務局などに提出する書類の作成や、登記手続きの代理業務を行う専門家です。登記のプロであるため、不動産を相続する場合に適しています。
弁護士も、司法書士と同様に代理申請できますが、登記を専門にしている弁護士は多くありません。また、依頼料も高額になることが多いです。
◆相続財産について他の相続人と揉めている場合は弁護士に相談する
相続財産で他の相続人と揉めた場合は、弁護士に依頼すると早期解決につながります。
弁護士ならば、法的アドバイスが可能なためです。
また、万が一裁判まで発展した場合も、有利に進める事ができるメリットがあります。そのため、相続内容で揉めている場合や揉めそうな場合は、弁護士に相談することがおすすめです。
◆相続税の申告が必要なら税理士に相談する
相続税の申告が必要なケースは、税理士に相談するのがおすすめです。
司法書士や弁護士は、相続税の申告について相談にのることができません。税理士法により、相続税の申告は税理士にのみ可能です。
ただし、相続財産が相談税の控除額を上回っていない場合は、申告は必要ありません。
遺産分割協議書の作成を依頼するケース
遺産分割協議書は、司法書士や弁護士、税理士であっても作成することが可能です。
そのため、依頼する場合は他の手続きとあわせて依頼するのがポイントになります。
例えば、司法書士の場合は、相続登記の手続きとあわせて遺産分割協議書の作成を依頼します。税理士の場合は、相続税の申告とあわせて遺産分割協議書の作成を依頼するといった形です。
このように専門家に依頼する場合は、依頼内容の中に遺産分割協議書の作成を含むとスムーズに進めることができます。
専門家への依頼料金
専門家への依頼料金の目安は以下になります。
費用 | 備考 | |
弁護士 | 5〜15万円 | 遺産分割協議の作成のみ |
司法書士 | 12〜20万円 | 相続登記を含む手続きを依頼したとき |
行政書士 | 15〜20万円 | 相続人の調査から遺産分割協議の作成までを依頼した料金 |
税理士 | 13〜50万円(相続財産5,000万円まで) | 相続税申告の手続きを依頼した場合、相続財産によって費用が変動する |
場合によっては複数の専門家に依頼するケースもありますので、費用対効果はよく検討する必要があります。
お金の専門家として、マネーデザインはかかりつけの内科医の立ち位置にいます。もし、相続税や不動産の移転登記などが必要となった場合、外部の専門家におつなぎして、最後までしっかりとサポートする体制を整えています。
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