相続のリアル Part1

相続は誰にでも起こりうるものです。特に40歳代~60歳代の方々には親からの相続に頭を悩ませる場面が出てくると思います。一方、資産があると大変だな、自分には関係ないと思い、身近な問題に感じていない方も多いのではないでしょうか。しかし相続は誰にでも起こりうる、特に皆様が相続人となる場面は必ず出てきます。ただ、皆様が相続人となった場合は、もう親御さんは亡くなっているので、直接相続手続きに関わることはできません。

しかし、遺言という形で自分の財産の処分について意思表示することはできます。そして、ご自身が相続人となり手続きの中心となることはそう何度もあることではないかもしれません。それだけに、実際の相続手続きってどんなことがあるの? と、不安に思われていると思います。今回は、相続手続きのリアルを書いていきます。読みやすいように、いくつかのPartに分けて執筆します。ぜひご参考にしてください。

相続対策はお金持ちだけのもの?

相続の話をすると、「それはお金持ちの家の話。うちはお金ないから、別にやらなくてはいいのでは」、「兄弟姉妹、仲がいいから別に争いはおきない」、「俺に万が一のことがあれば、取りあえずはみんなお母さん渡してくれ。その後、お母さんが亡くなったらお前たち好きに分けろと、子どもたちには伝えてある」など、身近な問題に感じていない方が多いようですが、本当にそれで大丈夫なのでしょうか? 前述のように、相続は誰にでも起きるものですが、相続人(遺産を受け取る人)になるケースはそう多くはないでしょう。だからこそきちんと知っておきたいものです。

とはいえ、相続はどれとして同じものはありません。世帯ごとに様々な相続があると言っても過言ではありません。また、世の中にはネットを中心に様々な情報がありますが、すべてが自分の役に立つ情報ではありません。ご自身の状況を把握し、情報を取捨選択することが必要となります。そのいざというときのために、ご自身の頭の引き出しの片隅にいれておくのとそうでないのでは、いざというとき全く異なります。これから相続の役立つポイントの基本を確認しながらお伝えします。

そもそも相続はいつ、どこで始まるの?

相続は、人が亡くなると始まります。相続が始まる場所は、亡くなった方の最後の住所地です。最後の住所地は、住民票の除票で確認します。

相続が始まる場所というのは、あまり聞きなれない言葉だと思いますが、遺産分割協議書にも、被相続人(財産を渡す側)の最後の住所を記載します。それは、万が一相続や遺言に関して家事審判を申立てる際、被相続人の住所地を所轄する家庭裁判所宛にしなければならないということが、家事審判規則に定められているからです。相続放棄の申し立てなどもそれにあたります。

亡くなる前に居住型の介護施設などに入居しておられ、住民票を移している方などは特に注意が必要です。

人が亡くなったらすべきこと

最初にすべきことは、死亡届の提出です。

死亡届は、その人の死亡を知った日から7日以内に提出します。ただし、国外で死亡した場合は3ケ月以内となります。提出先は、①死亡した人の本籍地、②届出た人の住所地、③死亡した場所のいずれかの区市役所または町村役場です。

届出をする人は、死亡した人の①親族、②同居者、③家主、④地主、⑤家屋管理人、⑥土地管理人等、⑦後見人、⑧補佐人、⑨補助人、⑩任意後見人のいずれかの方となります。

添付書類は死亡診断書または死体検案書(死亡届と一体になっています)です。なお、死体(埋)火葬許可申請も同時に行います。

手続き的なことはまず死亡届ですが、通常人が亡くなってすぐに行われるのは葬儀です。

葬儀社を依頼する際、普通は病院から紹介されることが多いかと思います。そこにはカラクリがあり、病院と葬儀社は事前にタイアップしているところがほとんどです。したがって、病院指定の葬儀社を紹介するとバックマージンが病院に入ります。この費用は、間接的に亡くなった方の葬儀費用に上乗せされます。それを防ぐためには、事前に安心できる葬儀社を探しておくのも一つの方法です。

葬儀費用は、相続税の計算の際に相続財産の価額から差し引くことができます。差し引くことができる主な葬儀費用は葬儀社等への支払い、火葬の費用、お寺などへの支払い(葬儀の読経や納骨、埋葬費用など)があります。墓地墓石の購入、香典返しや法要の費用は差し引くことはできません。取りあえずは、かかったものすべてを明確にし、領収証などはきちんと整理しておくことが大切です。

最近では、コロナの関係で遠方から来られないなど、家族葬など地味に内輪で行う葬儀も増えているようですが、葬儀費用をどうやって工面するかというのが、最初に直面する切実な問題です。

たとえば配偶者や子どもたちが工面できるのであればそれに越したことはありませんが、家庭の生活費等の口座は世帯主名義になっていることが多く、金融機関では、名義人が亡くなったことがわかった段階で口座を凍結するため、生活費に利用していた口座から預貯金がおろせないということが起きます。また、そういった情報を事前に聞いていて、たとえばご主人の容態が悪く、あまり長くないのではないかと思ったとき、ご主人が亡くなる前にまとまったお金を引き出してしまうなどということは、現実的にはよくあることのようです。特に相続税がかかるかどうかという境界線に近い場合では、税を逃れるために意図的に操作したとみなされる場合があります。

もし、直前に多額の現金を引き出した場合は、相続財産として「現金」で計上してください。相続税が絡まなくても、相続人の共有財産であるはずの被相続人の預貯金を亡くなる前に引き出すというのは、ほかの相続人にあらぬ疑いや誤解を生じさせるもとになります。葬儀費用などに使うのであれば、その旨をあらかじめ伝えるなどして、明らかにしておくことが大切です。領収書など費用のすべてを整理しておくことは、あとあとの紛争をおこさないといった意味でも大切なことです。
※民法(相続法)の改正により、預貯金の払戻し制度が創設され、2019年7月1日より施行されています。これにより、限度はありますが、相続手続き前に払戻しを受けることが可能になりました。

差し引きできる葬儀費用のなかで、お寺などに支払う読経料等のお布施は、通常領収書がもらえません。その場合でも、日付や相手先、目的などをきちんと書いておき、その金額が一般的に考えて相当である限り、税務署にはほとんど認めてもらえます。

相続税の計算で、葬儀費用は相続財産から控除できると述べましたが、実際負担は誰がするべきか、という事に直面します。これには特段、法的な縛りはありません。地域や家によって、慣習があるところもあるでしょう。一般的な例としては、喪主が負担して香典や弔慰金を充当し、不足分を故人の相続財産から補ったり、相続人で負担したりということが多くあるケースでしょう。相続財産から負担する場合は、事前にほかの相続人の了承も得ておかないと、後々もめることにもなりかねません。そのようなささいなことから、まとまるはずの遺産分割協議がまとまらなくなるということもあります。

次回「相続のリアル Part2」では、遺言書と戸籍関係をお伝えします。