はじめに 持ち家vs.賃貸 永遠の論争の答えは

日本のグランドデザインの基となる人口動態

日本の少子高齢化は、そのスピードを加速させています。アメリカの電気自動車メーカー、テスラのイーロン・マスク氏などは、将来日本人がいなくなる、というつぶやきをTwitterに載せたほどです。事実、厚生労働省が2022年8月30日に発表した2022年1~6月の出生数の速報値は前年同月比5.0%減の38万4942人でした。これを単純に2倍すると年間約77万人の出生数となり、過去最低となる見込みです。コロナにより、世界中の人々の生活様式、思考が一変しました。こと我々日本人の生活様式にも様々な変化が起きています。
この少子高齢化に拍車をかけているのが、コロナです。新型コロナの感染拡大に伴う婚姻数の減少や妊娠控えが、その大きな要因ともいわれています。

2020年から広まったコロナにより、従来から変化しようとしていたことのスピードが加速した一例が、働き方です。
毎朝満員電車に揺られ、決して遅刻しないよう郊外から都心のオフィスへ通勤し、オフィスに時間通りに集まることが当たり前という、まさに同調圧力に屈しやすい日本人にピッタリな世の中から、Webを使ったコミュニケーションで十分ではないか、わざわざ毎朝一斉に移動し、都心のオフィスに集まる必要性は本当にあるのか、といった考え方が芽生えてきたわけです。

働き方の変化と企業、勤労者側の考え方の変化

このような状況を頭に置きつつ、会社側、勤労者側のそれぞれの変化を見ていきましょう。

まず、労働者を雇用する経営者側からは、「本当に高い賃料を払って従業員が一堂に会する必要性があるのか、もしWebでコミュニケーションがはかられ、仕事の生産性が損なわれないのなら、都心のオフィスは必要ないのではないか」という考え方が出てきました。
しかし、コロナが広まる前から計画されていた都心のビル建設や再開発は、今から止めることはできません。その結果、都心のオフィスあまりはますます加速し、オフィス空室率も上昇していくことが予想されます。
まず、築年数が50年を超すような小規模な雑居ビルの空室率が上がり、賃料を下げてもなかなか入居者が集まらないといった状況になります。

そのようなビルのオーナーは高齢化により、これ以上自分でビルの賃貸業を続けていくのがしんどくなり、その結果、ビルの維持管理にお金をかけなくなります。都心の中小のビル自体が古くなり、さまざまな問題が出てくることが予想されます。
次に、勤労者側の意識とそれに伴う不動産の考え方の変化です。まだ少数ですが、出社せずに、家からリモートで仕事ができる環境の方々は、高い家賃や不動産価格の首都圏、大阪圏、名古屋圏といった三大都市圏や周辺に住むことが合理的なのか、と考え始めます。

NTTのように、出社は任意でさらにどうしてもオフィスに出勤する必要がある場合、その交通費はたとえ飛行機であっても通勤費として支払うといった企業も出てきました。

このような例は、まだまだ少数ですが、今後少しずつ増えていくのではないでしょうか。そうなると、首都圏、大阪圏、中京圏といった大都市およびその周辺だけでなく、場合によっては地方移住、2拠点生活なども考えられるようになってきました。

家賃、不動産価格、食費などの生活費は当然地方の方が安く済みますので、地方で仕事を行うことができる方々は、都会暮らしにこだわる必要性が薄れてきたわけです。

こうなると、従来型の不動産に対する思考パターンも変化していく必要があります。

どうしても、不動産は購入すべき、いやこれから先どうなるか全く予想のつかない不確実性の時代なので、賃貸で行く方が良い、など いわゆる 「不動産の所有vs賃貸」論争がますます複雑化してきたのです。

そこで、コロナ禍の現在、この論点をどう考えていくか、整理していく良いタイミングではないかと考え、今後連載形式で皆様にお伝えしていきます。