贈与税と相続税 一体化のゆくえと対策

毎年12月末に発表される税制改正大綱ですが、今年末発表予定の2023年分は、相続贈与に関わる税制をめぐる4年越しの議論に終止符を打つかと注目を集めています。

2019年から暦年課税と相続時精算課税の二制度のあり方を見直すための検討が始まりました。

年110万円の限度額である暦年課税を活用し、資産を小口分割して複数の親族に繰り返し移転することで相続税を減らす生前贈与が槍玉に上がりました。
以前は、高齢世代に偏った資産を若年層へ早期に移転し、経済活性化につなげる世代間移転を重視した税制改正が行われてきましたが、それが次第に節税抑制にシフトしてきました。

大綱の基本的考え方の中で、21年度22年度と2年続けて本格的に見直す、と明記されているだけに、23年度税制改正で手が加わる可能性が高まっています。

相続税と贈与税の仕組み 贈与税には2つの課税方式

変更点を見ていく前に、相続税と贈与税の仕組みをもう一度おさらいしてみましょう。

どちらも「個人間(主に親族間)の資産移転に関わる税金」で、生前に移転した資産に課税されるのが贈与税、亡くなってから移転した資産にかかるが相続税です。

相続税と贈与税はそもそも一体のものです。したがって贈与税には所得税や消費税のような独立した税法はなく、相続税法の中に組み込まれた税です。
生前に行う贈与は相続財産の前倒しであり、そこで課税された贈与税は相続税の前払いの意味があると考えます。

相続税と贈与税(暦年課税)は、移転する金額が大きいほど税率が高くなる累進税率です。ただ相続より贈与が有利にならないよう、贈与税率の方が上昇する割合が高くなっています。
贈与税には二つの課税方式があります。元々は年単位で課税される暦年課税が基本でした。しかし、暦年課税制度は少額資産の贈与には適しているものの、不動産など高額資産を贈与する場合は高い税率が適用されることから採用しづらいのが現状です。

一方、高齢化の進展で相続による資産の世代間移転の時期が、より高齢期にシフトしているのが現状で、高齢世代に遍在する資産の若年世代への移転が進みにくい状況にあります。

この状況を是正するため、2003年に累計2,500万円までの特別控除額までは贈与税をかけずに贈与でき、贈与した分を相続税に持ち戻す「相続時精算課税制度」が創設されました。

贈与か相続かを問わず、いつ財産を移転しても最終的に支払う税額が大きく変わらない中立的な仕組みを目指したのです。

しかし「相続時精算課税制度」には後で述べるリスクが伴うため利用率が低迷しており、暦年課税を使った生前贈与の人気が相変わらず高いのが現状です。それが今回の税制改正の議論につながっているのです。

今後の税制改正で予想される内容とは

マスメディアなどでは暦年課税が廃止され、「相続時精算課税」に一本化されるといったような声もありますが、これは現実的ではないと予想します。

その理由は、預貯金口座を全て後追いできるマイナンバーカードの普及率が低い現状では、生前に贈与された時期と累積金額を捕捉できず、税務当局も情報を把握できないからです。

では、想定される改正はどのようなものでしょうか。それは、現在暦年課税に規定されている、「相続開始前3年以内の贈与を相続財産に加算する」という、対象期間3年の見直しです。

欧米各国の現状を見ると、イギリスが7年、ドイツが10年、フランスが15年、さらにアメリカは無期限に遡っています。
加算対象期間が長いほど資産移転時期に中立的になり、贈与税と相続税がより一体化しますが、アメリカのように無期限や10年以上と長くしすぎるのは実務的に対応しにくく、5年から7年以内に延長されるのが現実的かと思います。

また「相続時精算課税制度」をより使いやすい仕組みに改善する改正も考えられます。
現行法では贈与時点での価格を相続財産に持ち戻すため、贈与時より相続時の評価額が下がった場合であっても、贈与時の高い価格で計算することになるので、納税者に不利になります。

さらに贈与者と受贈者の年齢制限があったり、生前贈与した宅地には小規模宅地等の特例が適用されないなど、使いづらさがあります。「相続時精算課税制度」の活用を促進ためには、これらのリスクやデメリットの解消が求められます。

その他「住宅資金贈与」、「教育資金贈与」、「結婚・子育て資金の贈与」といった三つの一括贈与に関わる非課税枠の改正は、扱いが異なりそうです。

「結婚・子育て資金の一括贈与」は年間の利用件数が全国で300件台と極端に低いため、2023年3月末の期限で廃止になる可能性が高いです。

一方、財産の世代間移転を促す効果が高い「住宅取得等資金」や「教育資金」の一括贈与は、非課税枠の拡充も検討されているようです。

しかし、親が子供の教育資金をねん出するのは、ごく当たり前のことですので、教育資金贈与は祖父母から孫へといったケースでの活用が一般的ではないでしょうか。