50歳から考える 退職後の資産運用

人生の折り返し地点に立つ50歳。もう50歳か、まだまだ50歳か と考え方を変えるだけで、 今後の人生の張りも変わってきます。

多くの50歳の方々は、今まで積み上げてきた資産をどう活用するかまで、考えている方々は そう多くないのではないかと思います。

ただやみくもに貯めるより、何を目的として資産をためるのか、これを明確にすると、 資産運用のモチベーションが一気に高まります。

老後2,000万円問題に代表されるように、公的年金だけで老後資金が賄えるのか、不安を感じたうえで、 それを払拭するために、貯蓄をしていると思います。

これから、着目していく必要があるのは、いかにお金を取り崩していくか、という視点です。

これを、Decumulation(デキュミュレーション)と呼びます。

(出典:金融庁)


耳慣れない言葉かと思いますが、金融老齢学(ジェンロントロジー) というアメリカで1980年代後半に生まれたれっきとした学問で、リタイア後世代のお金の出入りに着目した内容です。

中でも、50歳以降を3つの期に分けて考えることが大切だと言われています。


1 現役期

50歳といっても、まだまだ現役です。これからいろいろなことにチャレンジできる世代とも 言えるでしょう。現役期は、お子様の教育費がようやく終わりが見え出します。50歳から60~65歳まで積立を行うと、老後資産形成は 有利に働きます。

例えば、毎月5万円を12か月、10年間積み立てると

5万円×12か月×10年=600万円

です。 これをほとんど無利息な定期預金においておくと、600万円は変わりません。

しかし、これを年利3%で複利運用しますと、6,987,071円となります。10年間で98万円の違いが出ます。 このシミュレーションは、金融庁の シミュレーションソフトで計算できます。

この運用期は、「長期」「積立」「分散」が鉄則です。このように、毎月一定額を コツコツと積み立てる方式を「ドルコスト平均法」と呼びます。

さらに、税金対策も必要です。大事なのは、税引き前の金額ではなく、税引き後の手取り額です。 税金は、うまく対処しないと運用成績を大きく損ねるファクターとなります。 老後資産を作るという目的では、iDeco さらには、NISA、積立NISAがあります。 これを上手に組み合わせて最大限税金のマイナスファクターを押さえる必要があります。

今回のコロナ禍では、将来の予測がますます難しくなってきました。実態経済は、厳しい状況 が続きますが、 一方株式市場は、大きな下げを見せていません。これは、日銀、FRB(連邦準備制度理事会)、欧州中央銀行と いった各国中央銀行が、大幅な金融緩和政策をとった結果、市場にあふれ出たお金の行き先の一つとして、 株式市場が選ばれている状態です。

そのようなマクロ経済の環境下では、今後の市場の動きを予測することは不可能です。そんな時こそ、鉄則である、 「長期」「積立」「分散」をコツコツ行うことが、資産形成に大いに役立つと考えます。

2 リタイアメント前後期

この時期は、会社勤務の方々は退職金や企業年金が入る時期でもあります。また、相続でまとまったお金も 入ってくるかもしれません。

この時期に、今まで積立てきた資産をどの活用、取り崩していくかを考える必要があります。まさに前に述べた Decumulationを考える時期です。

さらに、まだ働けるうちは現役として働くことで、資産の減少を少しでも先延ばしすることができます。 実は、この「働く」ということは、資産運用の観点からも、「最強のデフェンス」ともいえる方法です。

さらに、まだ働けるうちは現役として働くことで、資産の減少を少しでも先延ばしすることができます。 実は、この「働く」ということは、資産運用の観点からも、「最強のデフェンス」ともいえる方法です。

しかし、60歳前後の働き方は、様々です。

今の会社にいて、雇用延長で働くのか、それとも別の会社で働くのか、それとももう少し早い段階で、複線収入を 得ることができるよう、準備を始めるのか、様々な選択肢があります。

以前は、大部分の方々が、そのまま雇用延長で、一社内で勤め上げる、といった終身雇用制度が、主流でしたが、 今は完全にこの制度が崩れています。50歳から、自分が外に出ても戦力として使いものになるのかどうか、 これは50歳以前から、念入りに準備する必要があります。

人生100年という言葉を広めた ロンドン大学のリンダ・グラットン教授によると、これからは、パラレル・ ワーカ―の時代になると予言しています。

今回のコロナ禍により、そのスピードはますます増している状況です。この準備を怠ると、老後の生活がかなり 厳しいものとなる覚悟が必要です。そうならないうちに、様々な考えをめぐらし、準備を進めることが必要です。

3 高齢期

この時期は、完全に職から離れ、悠々自適の生活を進めていくタイミングです。 場合によっては、住み慣れた家を離れ、施設に移ることも考え始める場面もあるかもしれません。

その場合の選択肢として、①自宅売却 ②リースバック ③リバースモーゲージ などが考えられます。

また、様々な介護施設がある中で、どのような種類の施設に入所すべきか、考えるポイントは様々あります。

さらに、現実問題として向き合う必要があるのは、認知症になった場合の資産管理です。

認知症と判断された場合、株式、投資信託、債券といった金融資産、不動産などは、たとえ家族であっても 名義を変更することはできません。

基本的には、成年後見人、任意後見人を付けることとなりますが、多額の費用が掛かるケースが多いのが 実状です。

そこで、最近は家族信託を活用し、財産を守る方法がとられます。すべてのケースに当てはまる訳では ありませんので、場合によっては使えないこともあります。また、家族信託に不慣れな専門家に依頼すると 効果のないケースも出てきてしまいます。

このようなときには、実務に精通した専門家のアドバイスを受けた上で、上手な制度設計を作ることが 大切になります。

マネーデザインができること

資産を増やし、防衛するためには、ちょっとしたコツがいります。お金に関して言えば、その知識があるか ないか、ただそれだけです。それを得ることで、生涯の資産額が大きく変わってきます。 「長期」「分散」「積立」といった投資の王道を着実に進めることで、1億円をためて、「経済的独立」を 得ることは難しくありません。マイナス金利の時代であっても、金利3%で複利運用することは、 決して難しくありません。また、金融商品の組み合わせである、「ポートフォリオ」を適切に組むことで、 リスクをできるだけ回避しながら資産を増やすお手伝いをしてまいります。